今年の年賀状のうち個人的なものについては,次のように,私事ではあるが傘寿を迎えるにあたって今までをふり返り,気持ちを新たにするとともに,私を支えて下さったことへのお礼を述べることにした。
恭 賀 新 年
おだやかな元旦をお迎えのことと存じます。 さて 私こと この一月十八日で傘寿を迎えることとなりました。思えば高校・大学とも 「見上げてごらん夜の星を」(昭和三八年、坂本九)のもと、ささやかな幸せ を求めて勉学に励み、その星を手にすることができました。私の人生は、 「川の流れのように」(昭和六三年、美空ひばり)身をまかせて参りましたが、 身に余る人生を過ごさせていただいています。このことは「わが人生に悔 いなし」(昭和六二年、石原裕次郎)の一語につきます。これからも「一生勉強 一生青春」(昭和五九年、相田みつを)を忘れることなく努力して参りたいと存 じます。今まで支え励ましていただいた多くの方々に深謝申し上げますと ともに、皆様のご清栄とご健康をお祈り申し上げます。 平成二十九年 元旦
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この「傘寿」とは,「傘」の略字「仐」が「八十」と読めるところから八十歳のこと,または八十歳の祝いのことをいう。また,傘は雨・雪・強い日差しを避けるために頭上にかざして用いる道具であることから身を守ることに役立つものであり,和傘として番傘・唐傘,洋傘としてパラソル・こうもり傘があるが,いずれも17世紀から用いられるようになった。最近,自動で折り畳みができる洋傘を購入したが,片手で開閉ができるためずいぶん便利になった。
ところで「寿命」は生物の誕生から死までの生きている期間をいうが,日本人の「平均寿命」は戦前の1935年には男性は46.9歳,女性は49.6歳であり,戦後の1947年には男性50.1歳,女性53.0歳であったが,その後大幅に長くなって1997年には男性77.2歳,女性83.8歳,2015年には男性80.8歳(世界4位),女性は87.1歳(世界2位)となった。
ここで,日本人の寿命の推移を示すと,次のとおりである。
日本人の平均寿命 |
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時 代 |
男女平均寿命 |
縄文時代 |
31歳 |
弥生時代 |
30歳 |
古墳時代 |
31歳 |
室町時代 |
33歳 |
江戸時代 |
45歳 |
明治24~31年 |
43歳 |
大正15~昭和5年 |
46歳 |
昭和10~11年 |
48歳 |
昭和22年 |
52歳 |
平成19年 |
82歳 |
平成27年 |
83歳 |
(出典:http://www.geocities.jp/yasuragigogo/nagaiki3.htmなどにより作成。)
これに対し健康で自立した生活ができる期間,つまり平均寿命から日常生活を大きく損ねる病気・けが・要介護など不健康な期間を除いた期間を「健康寿命」といい,2013年では男性71.2歳,女性74.2歳であり,健康でない期間は男性9年,女性13年となり,この期間をより短くするためにはそれなりの努力を必要とする。
老後の始点を何歳とするかは人によって相違するが,一般的な定年が65歳であるから,それを始点とすれば平均寿命までは男性15年,女性22年の長い期間がある。その生き方について保坂隆著『精神科医が教える 人生をもっと楽しむ「老後の学び術」』(PHP文庫,2016年)には,第1章「シニア期の「学び」はこんなに楽しい!」,第2章「大学は,「若者」だけにはもったいない」,第3章「「シニアの強い味方」カルチャーセンター」,第4章「やる気なら「学ぶお金」は何とかなる!」,第5章「資格や留学で「セカンドライフ」の扉を開く」,第6章「「学び」は老後をこんなに成熟させてくれる」の6章からなり,具体例を挙げてその学び方を紹介している。
このほか,インターネットで「管理栄養士の独り言」として,『健康寿命を延ばすポイントとして,『一読、十笑、百吸、千字、万歩』もおすすめです。これは、幕末から明治にかけての漢学者中島撫山の教えの1つです。』(http://www.japanclinic.co.jp/consult/consult_03_81.html)として次のような具体的な方法を紹介している(同上)。
一読:1日に1度は少し堅めの文章を読みましょうおすすめは新聞の社説です。
社説くらいなら10分ほどあれば読めますし、苦痛にはならない程度の量だと思います。 読書は知識の修得はもちろんですが、脳の活性化や認知症の予防にもなります。
十笑:1日に少なくとも10回は大笑いするようにしましょう
百吸:1日に少なくとも100回は深呼吸しましょう 深呼吸は神経の高ぶりを治め、筋肉の緊張をほぐし、心身を整えてくれます。
千字:1日に1000字は文字を書きましょう 日記や手紙がおすすめです。 文章を書くには頭を使わなくてはなりませんし、手は第2の脳といわれ、手先を使う作業は認知症予防に役立ちます。
万歩:1日に10000歩は歩きましょう 足は第2の心臓ともいわれ、歩くことで下肢にたまっている血液を心臓に戻りやすくし、血行改善やむくみ予防をサポートします。 さらに、肥満の予防と治療、ストレス解消、骨粗しょう症の予防にも働きます。 |
僭越ながら現在私が行っている健康寿命の保持方法をご紹介することとする。
(イ)知的学習
〔英語〕教材をノートに写し,辞書を用いて自分流に和訳をする(1日1~2ページ)。
主な教材:・NHKラジオ『実践ビジネス英語』(NHK出版,毎月刊)
(現代におけるビジネス世界の新しい傾向を知りながら英語を学ぶことができる。)
・西海コエン著,竹森ジニー訳『日英対訳 日本の歴史100』(IBCパブリッシング,2015年)
(日本の歴史100項目について,日本史の再学習もかねて英語を学ぶことができる。)
・晴山陽一著『こころ沸き立つ英語の名言』(青春出版社,2016年)
(欧米の著名人の名言を原文で学ぶことができる。)
・マックミラン・ピーター著,佐々田雅子訳『英詩訳・百人一首香り立つやまとごころ』(集英社,2009年)
(「えんぴつでなぞり書き百人一首」の英訳表現を併せて学ぶことができる。)
・大西泰斗,ポール・マクベイ著『一億人の英文法 ――すべての日本人に贈る「話すため」の英文法』(東進ブックス,2011年)
(英文法を具体的な英文を通して学ぶことができる。)
〔日本語〕教材に示された用語を市販の200字詰原稿用紙に書き写す(1日1~2ページ)。
主な教材:・『漢検完全征服準1級(練習問題集)』(日本漢字能力検定協会,2012年)
(漢検準1級は日常ではあまり使われていない日本語を取り上げているので日本語の幅の広さを学ぶことができる。)
・西東社編集部編『常識の「漢字力」3200』(西東社,2016年)
(漢検準1級の補助教材として多方面にわたって学ぶことができる。)
・出口宗和著『読めそうで読めない間違いやすい漢字(1・2)』(二見書房,2011年)
(日本語の基礎から応用まで総復習に役立つものである。)
〔日本文学等〕原文をコピーして書写し,それに関する参考書を通読する(1日0.5~1ページ)。
教 材:・依田草栄書『えんぴつでなぞり書き 百人一首』(角川SSコミュニケーションズ,2006年)
(一首ずつ二つの書体で書かれており,その違いを学ぶことができ,さらにその訳文,背景,作者の略歴を知ることができる。)
・大迫閑歩書『えんぴつで奥の細道』(ポプラ社,2006年)
・大迫閑歩書『えんぴつで万葉集』(ポプラ社,2007年)
・大迫閑歩書『えんぴつで徒然草』(ポプラ社,2006年)
・大迫閑歩書『えんぴつで枕草子』(ポプラ社,2007年)
・大迫閑歩書『えんぴつで漢詩』(ポプラ社,2006年)
(同じ書道家による美しい文字で書かれており,なぞり書きをすることによって美しく書くことができるとともに,これらの参考書を併読することによって日本文学等を楽しみながら学ぶことができる。)
なお,このために必要な時間は毎日平均120分である。
(ロ)身体的運動
〔スポーツクラブ〕週2回ほど,自主トレーニングをする。
自転車:10キロメートル 約32分
腕屈伸:機械2台100回 約5分
〔ゴルフ〕週1回ほど先生の指導を受ける。
練習場:コースに出る前と後に計約90分
コース:1ラウンドないし1.5ラウンド
上記は2015年12月から始めており,ゴルフを基礎からやり直しながら楽しさを味わっている。
次は90歳の「卒寿」まで元気でいたいと念じているが,40万部近く売れている随筆集である佐藤愛子著『九十歳。何がめでたい』(小学館,2016年8月刊)を読んだ。90歳すぎて今なお自由な生き方をしている著者の心身ともに元気な生き方を知ったが,やはり「めでたい」ことであると思った。
これからの人生をより充実したものとするため,これら(イ)と(ロ)は「一生勉強,一生青春」を維持するために必要なものであるので,私の日課,週課としていつまでも努力を続けたい。
―傘寿を迎え感謝の念を強くしながら―
平成28年12月23日
横山和夫